アマモは胞子で繁殖する「海藻」とは異なり、花を咲かせて種子を作り海底に地下茎を伸ばして生育する「海草」です。アマモは初夏に花を咲かせて実を結び、夏には多くの葉が枯れて流出します。秋から冬には種子が発芽し、地下茎からは新たな葉が伸び始めます。これらは春に繁茂し、初夏に再び開花し結実する生活環を繰り返します。
アマモの群生地はアマモ場と呼ばれています。七尾湾には、西湾を中心に環境省の日本の重要湿地500に選定された大規模なアマモ場が分布します。しかし、石川県が2011年に行った調査では、七尾西湾のアマモ場面積は1,258 haであり、1990年と比べて17%減少していました。これは透明度の低下や泥の堆積が原因と考えられています。また近年になって、夏季の高水温時にはアマモの株が枯死し、「多年生株」のアマモ場に代わって、種から新たに発芽した「実生株」のアマモ場が形成されることが確かめれれています。このように七尾湾のアマモは、生育面積の減少とあいまって生物量の減少が危惧されています。
アマモが群生するアマモ場の役割には次のようなものがあります。
1.地下茎が砂や泥の移動を抑えて海底地盤を安定させる。
2.林立するアマモが波を打ち消すことで静穏域が形成される。
3.アマモ自体やアマモ場の海底に小型の貝類、エビ類、ゴカイ類など様々な
な微小生物が生育し、それらを食物とする多様な生物が集まって豊かな生
物群集が形成される。
4.隠れる場所が多いため、魚類、貝類、イカ類、エビ類などの子供のすみか
を提供する(「海のゆりかご」と呼ばれる)。
5.海中の栄養分(窒素やリン)や二酸化炭素を吸収して、酸素を供給する。
このように七尾湾のアマモ場は、海域の豊かな生態系を育む機能を有しており、水産資源の維持・回復にも重要な役割を果たしています。
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